「ポーの一族」BOX.ヴァンパイアやゴシック好きの原点。ヨーロッパ美少年、デカダンスの魅力。永遠の命


「ポーの一族」をご存知ですか?

リアリタイムファンではないけれど、昔、友人が貸してくれた漫画で記憶に強く残っていた作品でした。それが、最近、凄く気になっていて、、、。

たまたま買いに訪れたドデカイ本屋で、その「ポーの一族」BOX SETに運命的に、遭遇!

迷いましたが、復刻版との事で買ってしまいました!

ヒョエー、大人買い。

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「ポーの一族」は、「11人いる!」など、少女漫画界の重鎮である萩尾望都のバインパイア・ファンタジー漫画です。

別冊少女コミックと月間フラワーズで、1972年3月号から短編から始まったシリーズ。1976年6月号まで、断続的に連載され、その中核となる単独作品「ポーの一族」は1972年9月号から12月号に連載されました。

2016年5月に連載終了から40年ぶりに『月刊フラワーズ』7月号に新作「春の夢」が発表され、その反響の大きさにより掲載誌が売り切れる書店が続出したため、重版されることとなったそうです。

2017年1月にシリーズが再開し連載中!

 

今現在も根強いファンが居て、連載も再開され、読まれ続けるとは、、、この「ポーの一族」の魅力は、まるで、作品に描かれているバンパネラ=ヴァンパイアの永遠の命のようです!

萩尾は「永遠にこどもであるこどもをかきたい」との発想から、石ノ森章太郎の『きりとばらとほしと』の吸血鬼の設定の一部をヒントにして『ポーの一族』の構想を思いつき1972年、「すきとおった銀の髪」、「ポーの村」などの短編から描き始め、同年8月から翌1973年6月にかけて当初の構想であった3部作(「ポーの一族」、「メリーベルと銀のばら」、「小鳥の巣」)を連載しました。

1974年に発売された単行本の初版3万部は発売から3日で完売し、『トーマの心臓』連載終了後、1974年12月「エヴァンズの遺書」でシリーズを再開、1976年5月「エディス」後編で終了。

2016年5月、40年ぶりに新作として「春の夢」が発表され、2017年1月にシリーズが再開し連載中。

西洋に伝わる吸血鬼(バンパネラ)伝説を題材にした、少年の姿のまま永遠の時を生きる運命を背負わされた吸血鬼エドガーの物語。成長の代償に失うもの、大人になれない少年の姿が描写されている。200年以上の時間が交錯する構成で、舞台は18世紀の貴族の館から20世紀のギムナジウムまでさまざまである。作品発表当時としては異色の作品であり、少女漫画の読者層を増やした作品です。

1976年、第21回(昭和50年度)小学館漫画賞少年少女部門を受賞。

この少女漫画の王道である魅力をギュッと盛り込んだ「ポーの一族」。

そのボックスセットは、作品に描かれているヨーロッパの魅力をそのままに形にしたような美しい装丁を施されて居ました!

全巻が入った、外側の紙製のボックスは、美しい主人公エドガーとメリーベルの兄妹が仲良く微笑んでいる表紙になっています。

この可愛らしい2人が書店で、ニコッとLyraに微笑んで来ました!

もう、買い! (笑)

中も、このように美しいイラストが!

これには、ビックリ!

色々、ボックスセットは買って来ましたが、中まで綺麗にイラストが施されているのは、この「ポーの一族」が始めてです!

↑  上は、側面。

このエドガーが窓辺で立つイラストは、代表的なイラストであちこちで拝見しました。

その度、美しいなーと惚れ惚れした!

カバーの裏面です!

壮大なストーリーを締めくくるような繊細なタッチのイラストが印象的!

 

中に入っている作品は、全巻、全編、しっかり網羅されていました。

作品

すきとおった銀の髪(『別冊少女コミック』1972年3月号)
ポーの村(『別冊少女コミック』1972年7月号)
グレンスミスの日記(『別冊少女コミック』1972年8月号)
ポーの一族(『別冊少女コミック』1972年9月 – 12月号)
メリーベルと銀のばら(『別冊少女コミック』1973年1月 – 3月号)
小鳥の巣(『別冊少女コミック』1973年4月 – 7月号)
エヴァンズの遺書(『別冊少女コミック』1975年1月 – 2月号)
ペニー・レイン(『別冊少女コミック』1975年5月号)
リデル・森の中(『別冊少女コミック』1975年6月号)
ランプトンは語る(『別冊少女コミック』1975年7月号)
ピカデリー7時(『別冊少女コミック』1975年8月号)
ホームズの帽子(『別冊少女コミック』1975年11月号)
一週間(『別冊少女コミック』1975年12月号)
エディス(『別冊少女コミック』1976年4月 – 6月号)

これに、実際は、最近の連載されたもの
春の夢(『月刊フラワーズ』2016年7月号、2017年3月号 – )
番外編

があるそうです。

残念ながら、このボックスセットには、最近の作品だけはありません。

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それ以外に、

はるかな国の花や小鳥(『週刊少女コミック』1975年37号
1ページ劇場

1971年のひとりごと(『別冊少女コミック』1972年2月号)
ポーの伝説に寄せて(『別冊少女コミック』1974年12月号)

 

簡単に、あらすじをお話すると、

1744年、森の奥に捨てられた幼いエドガーとメリーベルは、老ハンナ・ポーに拾われて育てられるが、老ハンナとポー家の一族の人々は吸血鬼「バンパネラ」であった。11歳のときに一族の秘密を知ってしまったエドガーは、成人すれば一族に加わることを約束させられ、その代わりにメリーベルを巻き添えにしないよう彼女を遠くの町に養女に出させる。

1754年、エドガーが14歳のとき、正体を村人に見破られた老ハンナは胸に杭を打たれて消滅してしまう。彼女の連れ合いで一族の最も濃い血をもつ大老(キング)ポーは、いやがるエドガーを無理やり一族に加えてしまう。

3年後、13歳になったメリーベルはバンパネラのエドガーと再会し、自ら一族に加わることを望む。それから2人は一族のポーツネル男爵とその妻シーラを養父母として100年以上の時を過ごすが、1879年、4人の正体を知った医師によりメリーベルとシーラが消滅させられ、ポーツネル男爵もその後を追って消滅してしまう。

最愛の妹を失ったエドガーは絶望と悲しみに沈む中、新たにアラン・トワイライトを一族に加え、以後2人で100年近くの時を過ごすことになる。しかし1976年、2人にも永遠の別れの時が訪れる。

 

バンパネラの永遠の命は、誰もが憧れるもの。

しかし、彼らには常に、異端のモノとして人間たちから忌み嫌われ、追われる存在です。

作品の中で、エドガーやメリーベル、そして後から加わるアランたちは、落ち着く間も無く、世界各国を渡り歩きます。

人間たちから魔女狩りのように狩られるからです。

不思議なことに、彼らバンパネラは永遠の命を持ちながらも、杭を打ち込まれれば消滅します。灰になり消滅するのは、映画によくあるシーンと同じです。

しかし、ヴァンパイアの鏡に映らない、や、食べない、と言った古代から言い伝えられている特徴は、努力により意識すれば、全く普通の人間のように振る舞えます。(詳しくは、後の方で特徴を記載しておきます。)

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そのエドガーたちの人間たちとの共存する為の努力は、まだ、少年である彼らには多大なストレスになり苦しめていきます。可哀想なくらい。

そして、その順応性は、より人間たちへの恐怖を表していて、読む人たちはいつしか、自分は人間なのに、相反するバンパネラのエドガーたちへ同情していくという、、、不思議な現象を体験していくことになります。

「彼らの歳をとらないことへの恐怖」= 「人間として成長して歳を取り死ぬことへの憧れ」が、普通の人間たちの憧れである、「永遠の命」を持つことへの疑問に変化していくのが面白く感じます。

身近なテーマを盛り込んで、特異なヴァンパイアの世界を身近な存在にしてしまう作者の手腕は、見事です。

そして、マザーグースの詩やロンドンの町並み、ギムナジウムの男子校の世界は、ヨーロッパ好きな人や海外の美少年好きの少女漫画ファンの願いを全て叶えてくれるストーリーになっていると言えましょう!

Lyraは、全てのゴシック好き、デカダンスなカルチャー好きの欲求を満たしてくれる作品になっていると思うので、もし、あなたが、ゴス好きならば、ヨーロッパ文化が好きならば、少女漫画ファンならば、是非、手に取るべき一冊ですよ!

 

最後に、、、時代がフラッシュバックのように行ったり来たりする現代的な作風のこの「ポーの一族」。

簡単な時系列をまとめておきます。

参考に使ってみてくださいね。これ片手に漫画を読むと、進み方がわかりやすいですよ。

◉年表

1740年5月12日 エドガー誕生。
1744年 メリーベル誕生。メリーウェザー死去。
エドガー(4歳)とメリーベル、エヴァンズ伯爵夫人の命でイルリー乳母により森へ捨てられる。老ハンナ・ポー、エドガーとメリーベルを拾う。
1751年 フランク・ポーツネル男爵とシーラ(20歳)が結婚。シーラ、バンパネラに。
儀式を見たエドガー(11歳)、20歳になると一族に加わると約束させられる。
メリーベル(7歳)、アート男爵家の養女に。
1754年 老ハンナ・ポー、消滅。エドガー(14歳)、大老(キング)ポーによりバンパネラに。エドガー、スコッティの村を追われポーツネル男爵夫妻と町へ。
1757年 メリーベル(13歳)、オズワルド・オー・エヴァンズ(22歳)とユーシス・エヴァンズに会う。ユーシス・エヴァンズ自殺。メリーベル、エヴァンズ家の養女に。メリーベル、エドガーに連れられバンパネラに。(「メリーベルと銀のばら」)
オズワルド、マドンナと結婚。
1780年 オズワルド・オー・エヴァンズ、遺書を残して死去。
1783年 クリフォード・エヴァンズ、館を図書館として市に寄贈。
1810年 クリフォード・エヴァンズ、息子ヘンリー・エヴァンズにオズワルド・オー・エヴァンズの遺書を託して死去。
1815年 エドガーとメリーベル、チャールズ(14歳)の近所に滞在。(「すきとおった銀の髪」)
1820年1月 エドガーとメリーベル、ヘンリー・エヴァンズの館に滞在。(「エヴァンズの遺書」)
1845年 エドガーとメリーベル、チャールズ(44歳)に会う。(「すきとおった銀の髪」)
1865年7月7日 グレンスミス・ロングバード男爵(20歳のころ)、ポーの村で2夜を過ごす。(「ポーの村」)
アラン・トワイライト誕生。
1873年 アラン(8歳)の父親とアランの婚約者ロゼッティ・エンライト(7歳)、港の事故で死亡。
1879年 エドガーとメリーベル、ポーツネル男爵夫妻とポーの村からシティへ移る。
エドガーとメリーベル、アラン・トワイライト(14歳)と出会う。
メリーベル、ジャン・クリフォードに撃たれて消滅。ポーツネル男爵夫妻、消滅。エドガー、ジャン・クリフォードを撃つ。
アラン、エドガーに連れられバンパネラに。(「ポーの一族」)
エドガー、アランを連れてウィッシュ村へ。
リデル、森でエドガーとアランと暮らし始める。(「ペニー・レイン」)
1887年春 リデル(10歳)、エドガー、アランと別れて祖母と暮らし始める。(「リデル・森の中」)
1888年9月30日 – 1889年4月15日 アーサー・トマス・クエントン卿、エドガーの絵を描く。
1889年8月21日 クエントン卿(33歳)、死去。
(時代不詳[+ 14])エドガー、エルゼリ・バードと会う。(「はるかな国の花や小鳥」)
1899年12月25日 グレンスミス・ロングバード男爵、死去。
1900年 グレンスミスの娘エリザベス・ロングバード、トニーと結婚しドイツに渡る。
(時代不詳)

エドガーとアラン、ポリスター卿に会いにロンドンへ。その後ラトランドへ。(「ピカデリー7時」)
1914年7月、第一次世界大戦勃発。トニー、戦死。
1921年1月 エリザベスの次女ユーリエ(17歳)、死去。
1921年6月 エリザベスの長女ジュリエッタ、結婚。
1922年 エリザベスの三女アンナ(17歳)、ピエール・ヘッセンと結婚。
1923年 アンナ・ヘッセンの長男ピエール、誕生。
1924年 アンナ・ヘッセンの長女エレーナ、誕生。
1925年 エドガーとアラン、パリ万国博覧会で同族異種の吸血鬼ファルカと出会う。(「春の夢」)
(時代不詳)アラン、カレンとジューンに会う。エドガーとアラン、リトルヘブンでポラスト先生に会いドーバー海峡を越える。(「一週間」)
1932年 アンナ・ヘッセンの四女マルグリッド、誕生。
1933年 アンナ・ヘッセンの次女ベルタ、死亡。
1934年 ジョン・オービン(34歳)、ロンドンでエドガーに会う。(「ホームズの帽子」)
1940年 ジョン・オービン、リデラード・ソドサにエドガーの話を聞く。(「リデル・森の中」)
1942年 マルグリッド・ヘッセン、祖母エリザベスからグレンスミスの日記の話を聞く。(「グレンスミスの日記」)
1944年1月 エドガーとアラン、ウェールズ地方のアングルシー島でドイツから来た少女・ブランカと出会う。ファルカと再会する。(「春の夢」)
1945年 ジョン・オービン、エヴァンズ図書館でオズワルド・オー・エヴァンズの遺書とドクトル・ドドの手記を発見。
194?年 – 1952年夏 エドガーとアラン、ミッドランドでロビン・カーに会う。
1950年8月21日 ドン・マーシャル、レスターへ旅行中にクエントン卿の館でエドガーを描いた絵を発見。国定公園の文化記念館でエドガー、アランと1夜を過ごす。
1952年 ロビン・カー、両親が離婚し母親とリバプールへ。ロビン・カー、父親に連れられスイスへ。ロビン・カーの父、ロビンを西ドイツのガブリエル・スイス・ギムナジウムへ残して再婚しイタリアへ。
1953年 ドン・マーシャル、同人誌に「ランプトン」を発表。
1957年5月 ロビン・カー(12歳)、創立記念祭の前日に張り出し窓から墜落死[+ 20]。
エドガーとアラン、ロビン・カーを迎えにリバプールへ。
エドガーとアラン、ロビン・カーを追いスイスへ。
1958年5月 ガブリエル・スイス、創立記念祭の前日に水死[+ 21]。
1959年3月 エドガーとアラン、ガブリエル・スイス・ギムナジウムに転入。(「ポーの一族」「小鳥の巣」)
マルグリッド・ヘッセンの甥ルイス・バード、グレンスミスの日記の話を聞き、エドガーにメリーベルのことを尋ねる。(「グレンスミスの日記」)
1959年5月 エドガーとアラン、マチアスを一族に加えようとする。ロビン・カーの死体が発見される。キリアン・ブルンスウィッグ、目覚めたマチアスにかまれる。マチアス、テオドール・プロニスに枯れ枝を突き刺され、消滅。エドガーとアラン、転校。(「小鳥の巣」)
1960年 グレンスミスの曾孫(ひまご)マルグリッド・ヘッセン、『グレンスミスの日記』発表。
1964年 ドン・マーシャル(36歳)、マルグリッド・ヘッセンと結婚。
1965年夏 ドン・マーシャルとマルグリッド、『バンパネラ狩り(ハント)』を発表。
ジョン・オービン、クエントン卿の館を購入。
1966年春 ルイス・バード、キリアン・ブルンスウィッグとテオドール・プロニスを訪ねる。
1966年7月 ジョン・オービン、クエントン卿の館で集会を開く。館が出火し、シャーロッテ・エヴァンズ(14歳)死亡。(「ランプトンは語る」)
1976年 エドガーとアラン、ロンドンでエディス・エヴァンズ(14歳)に会う。
アラン、ストラスフォードのアーサーからもらった絵をエディス・エヴァンズに渡す。
ジョン・オービン、エドガーに再会。
アラン、消滅。
ジョン・オービン、クエントン卿によく似た人物(アーサー)を目撃。(「エディス」)

◉作品中でのバンパネラ(吸血鬼)の特徴

人間の血を吸うほかは、赤いバラやそのエキスを食用とし、基本的にそれ以外の食べ物は摂(と)らない。また、ある程度の技量があれば、相手をバンパネラ化させることなく血を吸うことができ、触れるだけで生気を吸い取れるという(「ポーの村」)。ただし、血を吸われた者がバンパネラ化しなかった場合、バンパネラの因子が体内に潜伏して子孫の代で発現する可能性がある(「小鳥の巣」)。また、バンパネラ同士で血を分け合うといった描写も見られる。

映らないとされる鏡に映るよう偽装することができる(「ポーの一族」)。さらに本来は呼吸、脈拍、体温も持たないが、同様に偽装できる。ただし、脈拍/体温は、大ケガをするなど体力が弱っていると、偽装しても通常の人間より少ない/低い(「エヴァンズの遺書」)。

一般的に吸血鬼の弱点とされる日光は平気で日中でも出歩いている。十字架や聖書も慣れることである程度苦手を克服できるが、十字架そのものよりも、それに込められた信仰が彼らにとっての脅威となる。銀の弾丸や杭またはこれに類する先のとがったもので胸を貫かれると消滅する。

 

「ポーの一族」

作者 萩尾望都
出版社 小学館
掲載誌 別冊少女コミック
月刊フラワーズ
レーベル フラワーコミックス
小学館叢書
小学館文庫
萩尾望都Perfect Selection
フラワーコミックススペシャル
発表号 1972年3月号 –
巻数 全5巻
全4巻(萩尾望都作品集版)
全3巻(小学館叢書版、小学館文庫版)
全2巻(萩尾望都Perfect Selection
フラワーコミックススペシャル)
話数 26話 + 番外編

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