同じものが良いという落ち度
作中に登場する人物やカルチャーについて坂元氏は、知り合いの中のある2人に取材し、会話の中で聞いた発言や趣味嗜好を基にし、その人たちと同世代の人のインスタ、さらにその同世代である何人かの人たちと直接会話や取材をし、そこから着想を得る形で人物像とストーリーを造形していった。そのため主人公の麦と絹は「友達の友達ぐらいにいそうな具体的な個人」という距離感で描くことに成功したと言えるだろう。
「同じ曲聴いてるつもりだけで、違うの、彼女と彼は今違う音楽を聴いてるの。」と先程あげたシーンで絹や麦はそれぞれ別々に若いカップルをディスる。このことから分かるのは、彼らにとって「同じであること」が良きことなのだ。
何もかもが同じことが、分かり合えることだと考えているのだ。そしてお互いをそっくりだ、と同一視してしまう存在と巡り合うことが、恋愛の理想形だと主人公は考えている。
これに関して、同じ感覚や趣味の異性や恋人や友達に出会い嬉しかった思い出や親近感を覚えた経験があるから気持ちはわかる。だが私にはそれは重要ではない為、「同じなら良いと言う短絡的な考えは大変だろうな」と見ながら思っていたらストーリーがまさにその予感的中で別れに向かっていったので「やっぱりね〜」と納得した。
なかなかこれについては意見が別れるだろう。同一視できる相手が分かり合えるから良いという人もいれば、全く自分とは違ったタイプで自分に足りないものを持っている人が成長出来て良いという人もいるからね。
どちらの恋愛が良いとか、どちらが正しいという正解はない。人間の顔が各々違うように色んな恋愛の形があるのだから。ただ恋愛アドバイザーのように色々な人の相談に乗って来たLyraだから(笑)、この場合のアドバイスは色々出来るし幸せにして来てあげた人が沢山いるが割愛する。だって知らない人に恋愛アドバイスしたくないから。
このように主人公達は「同じであること」が1番なのだ。最初に書いたように作品中ずっと「同じであること」が最高の恋とばかりに大プッシュして行くのだ。靴はジャックパーセル、映画の半券をしおりにして本を読み、チケットを取ったのに行けなかったお笑いのライブが同じ、本棚は「ほぼうちの本棚じゃん」と声に出てしまうほど似ている…だから2人は恋に落ちたのだ。
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多分2人はオタクだと自認しそれを口するよくいるタイプのサブカル好きの若者だ。このタイプは、自分の趣味を深く愛してる。それがゆえにそれを大切にする。だからお互いに愛するポップカルチャーを確認し合うことで自らを肯定されたかのように錯覚して行くのだ。ほんとうの人格を無視して…彼らは相手を見るより、似ている部分をピックアップしているだけなのに。
押井守、天竺鼠、cero、穂村弘、長嶋有、『粋な夜電波』、『宝石の国』、『ゴールデンカムイ』
好きなものをあげて相手も好きであれば、自分が正しいと言ってくれているみたいで嬉しいものだ。だから2人はいると楽になったのだ。
面白いのは、この好きなものが同じだった2人の恋が壊れていく原因の2つ目にこの好きなものが似ているということ=サブカルの世界が関連付けらているのだ。
再演を待ち侘びていた『わたしの星』を2人ではなく1人で見にいくし、楽しみにしていた『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』を仕事でできない麦…だから絹は1人でプレイするし、薦めた『茄子の輝き』は読まれぬまま放置、『ストレンジャー・シングス』や『マスター・オブ・ゼロ』を2人で一緒に見ることもしないで、一人でパソコンで鑑賞するようになる。時間が経つにつれ日々の生活に追われてしまい2人は「同じ」ではなくなってしまったのだ。
*【ストレンジャー•シングス4】第8話ネタバレ解説「愛だろ?愛!」あらすじ感想 Stranger Things4-8
生活や趣味も同じではなくなっただけならまだしも仕事への向き合い方も違うし、特に決定的だったのは先輩の死を「同じ」ようには悲しめないことで、2人の別れは決定的なものになったのだ。
この映画は、乙女が憧れる彼氏像や恋愛像を描く夢物語みたいな映画だ。泣いて懇願するのがよしとする乙女たちが多いのか?アレされたらマジで大変だしウチに何回も来られて周りに怒られた経験があるため、見ていて思い出してしまった。大泣きしてくれるのは有難いが実際は大変なのを知っていただきたい。世間には髪の毛をかわしかしてもらいたい女子が多いのかわからないが、してもらわなきゃいけない状況(病気など)なら有難いが、あれ人間だと思われてないペットみたいでキモい。あの感じで幸せというのはあまりにも安くないか?現実を見た方が良い。おままごとだな、と冷めてしまった。
そんなおままごと合わせて社会生活や資本主義に壊されていく現実も見せている映画でもあるのは面白い。同じが1番だという恋愛の脆さ、社会に適合していくことで時間に追われ、次第にサブカルと離れていく姿を描いて恋愛の壊れやすさや理想の人生の壊れやすさを描いている。さすが坂元裕二だ。
「劇中に登場するカルチャーは自分の趣味ではない」と坂元裕ニは語っていた。劇中におけるサブカルチャーの名称をやたらあげるのはStephen King スティープン・キングが、リアリティを出すためにやたら商品名や番組名を羅列するのと似ている手法だ。きっとそれ以上の意味はないのかもしれない。
日本で流行る音楽に嫌悪を抱き、社会の片隅で自分の好きな音楽や本などサブカルチャーに没頭しながら、狭い世界でひっそりと生きている若者達を描いているのだ。そしてこの狭い架空の儚い夢物語をリアルにしているのが、今の若者達を冷めた目線で描いていることなのだから皮肉だ。
人生うまくいかないから逃げる場所がサブカルチャー。そんな人は決してメジャーではないだろうけど、この日本国中には沢山いるだろう。だからこの映画はヒットしたのだ。
メジャーな日本のロックやポップスより、フォーク好きや演劇好きの人がハマる映画だろう。
サブカルチャーは大好きだ。それに同じ趣味の人と出会えた喜びは何度も経験したし幸せ者だと思う。だが、楽しい恋愛やら深すぎる恋愛関係(燃え上がったり、激しすぎたりすること)しかしてこなかったからか、どうもこの淡々とした感じや、同じじゃないとダメという制限、否定が馴染めなかった。私には遠くでおままごとか何かやってるだけで、残念ながらリアルには感じられなかったのでした。
自分には同じ趣味じゃなきゃダメとか、似たタイプの音楽や趣味じゃなきゃダメ、と言う制限がない。来る者拒まず去るもの追わず。
私を幸せにしてくれる人や優しくつくしてくれる人ならば男女問わずカモーン!なのである。そう言う人ならばHappyになれるし、私がHappyにしてあげるわ!
恋愛映画やラブストーリーものは、大好きなのになあ〜。なんとも言えない、この残念さが纏わりつく見た後の虚無感。明るくラストを終わらせたけれど個人的には虚しさが残る映画でした。
面白かったのは、良いと思っていた同じことが恋愛をぶち壊し、資本主義の渦に飲み込まれていく人間達の悲しさがチラチラと表現されていたのは良かったです。坂元裕二氏の作品は良作ばかりで好きですから。
主人公達の同じじゃなきゃダメ!と言う考え方が合わなかっただけでしょう。
良く言えば、インスタントラーメン普段食べないのに貴方が作ってくれたから食べたら貴方ったらお湯入れ過ぎてるから「味薄!」ってなったけど頑張って食べたよ、て感じ(視聴後の憤りモヤモヤが)。無理はいかん、無理は禁物ってことね。
諦めて生きていく感じや、制限された関係が自分には合いませんでした。(個人差があるので悪しからず〜♪)
ぜひいつか激しくも刹那いドロドロした泣けて熱いラブストーリーをドカンと描いていただきたい! 期待しております。
キャスト
- 山音麦:菅田将暉
- 八谷絹:有村架純
- 羽田凜:清原果耶
- 水埜亘:細田佳央太
- 川岸菜那:韓英恵
- 青木海人:中崎敏
- 恩田友行:小久保寿人
- 原田奏子:瀧内公美
- 羽村祐弥:森優作
- 中川彩乃:古川琴音
- 沖田大夢:篠原悠伸
- 卯内日菜子:八木アリサ
- 本條朱音:萩原みのり
- 嶋村知輝:福山翔大
- ラブホの男性:宇野祥平
- ラブホの女性:佐藤玲
- 歯科医:金子清文
- IT業界で働く男性:池田良
- 胃を半分切除したおじさん:水澤紳吾
- 加持航平:オダギリジョー
- バロン:サザエ(幼少期役)、キャビア(成長期役)、ジャック(成猫役)
- 押井守(本人役):押井守
- 土志田美帆:PORIN(Awesome City Club)
- 富小路翔真:佐藤寛太(劇団EXILE)
- エンジニアの男性:岡部たかし(切実)
- 八谷早智子:戸田恵子
- 八谷芳明:岩松了
- 山音広太郎:小林薫
スタッフ
- 監督:土井裕泰
- 脚本:坂元裕二
- 撮影:鎌苅洋一
- 照明:秋山恵二郎
- 美術:杉本亮
- 装飾:茂木豊
- 撮影効果)
- 音楽:大友良英
- 衣裳:立花文乃
- ヘアメイク:豊川京子
- スクリプター:加山くみ子
- イラストレーション:朝野ペコ
- VFXプロデューサー:赤羽智史
- 助監督:石井純
- 製作担当:宮下直也
- 企画:孫家邦、菊地美世志、那須田淳
- プロデューサー:有賀高俊、土井智生
- インスパイアソング:Awesome City Club「勿忘」(cutting edge)
- 助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
- 製作プロダクション:フィルムメイカーズ、リトルモア
- 配給:東京テアトル、リトルモア
- 製作:『花束みたいな恋をした』製作委員会(TBSスパークル、東京テアトル、テレビ東京、ジェイアール東日本企画、フラーム、CBCテレビ、毎日放送、朝日新聞社、KDDI、テレビ大阪、BSテレビ東京、TCエンタテインメント、フィルムメイカーズ、リトルモア)
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