【スローターハウス5】ネタバレ難解映画を解き明かす “Slaughterhouse Five”あらすじ感想

難解な映画ほど好きになってしまうLyraです。

“Slaughterhouse 5″は【難解過ぎ〜+ 有名俳優なし= 売れなかった映画】という典型的なB級さん、ですが、監督は”Sting”『明日に向かって撃て』で有名なロイヒルだし、原作はアメリカンノベルズで著名なカート・ヴォネガットなんです。

SF映画好きならば押さえておかなきゃダメよー、って事で本当にオモロイ作品だから難解だと言わずについて来てね❤️

『スローターハウス5』(スローターハウス ファイブ、Slaughterhouse-Five, or The Children’s Crusade: A Duty-Dance With Death)は、1969年に出版されたカート・ヴォネガットの小説。

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タイムトラベル( 時間旅行)を話のメインとして、作者のヴォネガットが目撃した第二次世界大戦中のドレスデン爆撃を話のスタートとして愛と人間を深くでもサッパリと描いたお話です。

SF小説らしい未来的な話と「人間とは何か?」と言う分析とを結びつけた作品です。

 

カート・ヴォネガットは、この作品でヒューゴー賞(1970年)を受賞。

『スローターハウス5』は、20世紀の第二次世界大戦での経験と、家族との関係を主人公ビリー・ピルグリムの様々な時代での物語が絡み合わせてお話は進みます。

特に映画では、原作より説明が全くナシ!

時代背景の説明もナシ!

どこにビリーがいるかもナシ!

又、ビリーがどんな特異体質→タイムトラベラーであるかさえも説明ナシ!

こうなると原作知らない人は初めの数十分は、舞台も話もあっちこち飛ぶので訳が分からなくなります。

しかし、一見無作為に見える出来事の連続ですが全て関連性があり、それらが組み合わさって作品の主題を提示しています。

だから、余程の難解話好きやSF小説好きじゃないと分けがわからなくなるでしょう。

映画好きさんでさえ、匙を投げたくなるかもしれません。

話は難解、俳優は地味、ストーリーは戦争中が出る回数が1番多いから暗い、、、となるとわからないままで諦めちゃうかも。

でも、普通の戦争映画と思っていたら突然、宇宙人話になるわ、ヒューマンドラマになるわ、と話の奥の深さに引き込まれていくでしょう。

「毛嫌いしないで是非、この良さを知って欲しいな!」と映画を久しぶりに見終わって本気で思ったLyraは感動していたのです。

前に紹介した“Eternal Sunshine of the Spotless Mind”(エターナルサンシャイン)も難解でしたが、あちらはワザと話を切り取り、SF仕立てに並べ替えている映画でした。

つまり、普通に流れてる時間を「現在過去未来」話の順序を製作者側が変えるせいで、観ている人々が時間を行ったり来たりタイムスリップしてる感覚になりましたが、この「スローター5」は本当に主人公ビリーが現在過去未来を旅します。

それも突然、説明なしで。

だからわからなくなる人が多くなり→訳わからないから面白くない→嫌い、となってしまう。

ならば、Lyraが今日わかりやすく説明すれば、分かった上でこの作品を見れば、カナリ深く人間を語った面白い映画だと好きになるかもしれません。そう思って、あらすじを先に書いてみますね。

原作を知るとそのまんまの映画なのです。原作ファンならば唸ることこの上ない映画なのに、、、

良かったら、その後のLyraの感想も読んでくださいね。

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= あらすじ =

「パパ!」と娘のバーバラは父のビリーが1人暮らしで、悲しみのあまりに死んだのではないか?と心配して実家を探し回る。

ビリー・グリアムは地下でタイプライターに自分の半生を綴っていた。

「自分は時に放たれ、時間を過去未来へと行ったり来たり出来る」と出版社宛の記事にのめり込んで書いていると、

「ビリー」と優しく名を呼ぶ声がする。

顔を上げると、自分を優しく見つめてくれるシャギーヘアの女がいた。(段を沢山入れた髪型)。

笑顔になるビリー。

笑顔になっていると突然、目の前が真っ白な世界になっていた。見渡す限り深い雪に覆われている嵐の中。

そう、ビリー・グリアムは、第二次世界大戦中、ろくに訓練も受けていない米国兵だった自分に戻っていて、雪原の中を1人歩いていたのだ。

道に迷っていたら、偶然、2人のアメリカ兵と会う。

彼らに暴行されそうになるが、ビリーがアメリカ兵であり従軍牧師助手の修道士である事を話すと、それが事実か信じる?信じないで小競り合いなり、そのうるささのせいでドイツ兵たちに見つかり3人とも捕らえられてしまう。

バルジ作戦に遭遇した彼らは、これからドイツのドレスデンにある使われていない屠殺場の奥深くに設けられた代用監獄で生活することになるのだ。

ビリーは「時間の中に解き放たれる」体質だった。

それも、自分の意思とは関係なく、突然、時代を超えて飛ばされるのである。

(説明はされていないが、ビリーが終戦後、結婚していた時に、飛行機事故でたった1人だけ助かり、脳の大手術をした時の、生き延びた際に残った軽い脳障害の結果、死を含む人生の様々な時点を無作為に繰り返し飛ばされ、時間旅行するようになったことが分かってくる。)

この雪原で迷い、アメリカ兵と小競り合いになってる時も1度未来に飛ばされる。

そこには未来風のガラス張りの大きなドームの中に座る、露出多めのシンプルなドレスを纏ったあのシャギーヘアー女がいた。

「ビリー?また過去に戻っていたの?」

「うん。」とビリーはソファに寝ていたらしい。笑いながら彼女を見る。冒頭で自分を呼んでいた女。

「大変ね。また戦争中でしょう?辛くない?」

「大丈夫。しょうがないよ」と優しく笑うビリー。

「私の魅力で止まるようにしてあげるわ。キスしてあげましょう」

優しく笑いながら「大丈夫だよ。ハニー」と言っていると、また雪原の中に突き倒されたままの軍服に戻り、ビリーがヘラヘラ笑っていると勘違いされて、アメリカ兵の2人に気味が悪いとど突かれると言った始末だった。

「貴方を待っていて良かった。幸せだわ」と茶色の髪のオンナがビリーとベッドで話していた。女は妻になったバレンシアだ。

2人は結婚したばかり。急に戦争直後へビリーは飛ばされたのだ。

この突然の予告なしの行ったり来たりが、常に起きるのがビリー・ピルグリムの日常なのだ。

戦闘の間、仲間となった2人のアメリカ兵のうちのローランド・ウェアリーによると、ビリーは信じられないほど戦闘に不向きで、そのせいで2人は捕虜になってしまったと言う。

ローランド・ウェアリーは、自身が捕虜になったことや死ぬこともビリーのせいにする。

ドイツの収容所に移送されている列車の中で死ぬ間際「俺はビリーのせいで死ぬんだ。」と言い続けたので、ウェアリーのネガティブで好戦的な友人ラザーロは、彼の言葉を間に受け「ビリー・ピルグリムを俺がちゃんとお前のために殺してやる!」と誓う。

そのラザーロの誓いがビリーとラザーロの因縁の付き合いの始まりになる。

ラザーロは「復讐こそが人生における最も甘美なもの」と信じていた。が、ビリーはいつも時空を旅していた為、いつどうやって自分が殺されるのかを知っていた。

ビリーは、移動中、ドイツ兵につきとばされて写真を撮る羽目になる。その時もビリーは、戦争中の新聞記者に写真撮られながら、結婚後に経営がうまくいって自社ビルを建てた前での家族4人で撮影した記念写真の場にいた。

両方の時代にいたビリーは、にこやかに笑って写真を撮られる。

 

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ビリーは、少しの間、終戦直後のアメリカに戻された。

戦争のPTSD、プラス、頻度が高いタイムトラベルからの神経症も煩い、入院中のビリーに母が見舞いに来てくれた。

愛する母なのに、布団から出られずシーツの奥から母の顔を覗く事しかできないビリー。

医者はビリーの症状を良くするためには電気ショックを与えるのが有効と、ビリーに電気療法を施してしまう。脳に電流を流されたビリー。

戦争中、ドイツに一時滞在した収容所でダービーと言う元教師に出会う。

ダービーは非人道的なことが嫌いな芯が通った男だった。

ラザーロのビリーに対する執拗な嫌がらせや暴行が見ていられず、ビリーを助けてくれるようになった。

ビリーは、子供時代にいた。父親がプールに投げ入れて、溺れそうになれば人間は自然と泳げるようになるからと、投げ込まれたビリー。そのまま溺れてしまった。

プールの底から溺れているのに、のんびりと水面を眺めるビリー。

気がつくとドイツ収容所にいた。イギリス兵たちが友好的で同じ収容所にいるなら仲良くしようと歓迎の歌を歌ってくれ夕食をくれた。

戦争直後に飛ばされたビリーは、裕福な家柄のポッチャリな女が妻になったが、妻の口癖は、「貴方のために痩せてスタイル良くなるわ。ダイエットするから。」というもの。

何かにつけてビリーが優しくしてくれたり、プレゼントをくれるとこのセリフを言う妻。

スポットと言う子犬を飼い芸を教えるのに苦戦するビリーだが犬との時間は幸せだった。

その度に妻はケーキを焼いたり豪勢な食事を作り庭にいるビリーを大声で呼ぶ。

ビリーは、ダービー達と苦しい思いをして働かされていたが又、未来に飛ばされて、妻が出産した祝いの場に到着する。

いつも可愛がっていた愛犬と戯れるのが好きなビリーは、「犬も子供が生まれて喜んでいるよ」と抱いていた犬を下に下ろすと、生まれたばかりの長男を抱いている妻の足元に犬がオシッコをしてしまう。

大激怒の妻に怒鳴られ、渋々、愛犬を抱いて庭のベンチに腰掛けていると、夜空の向こうに光る円盤のような物体が現れる。

犬と2人で驚いて固まっていると光る物体は、近づいて来てビリー達を確認すると、満足したかのように去っていった。

彼ら(ビリーと犬)が落ち込んだりすると現れる飛行物体。

それは、トラルファマドール星からやって来た地球外生物で、ビリーはこの出会いから数回後には、誘拐されてトラルファマドール星の動物園でポルノ映画スターのモンタナ・ワイルドハックとともに展示されることになる。

このモンタナ・ワイルドハックも数回、ビリーの前にサインとして現れていた。

1回目は、ビリーの長男が隠し持っていたエロ本をを見た時に。

2回目は、家族4人で行ったドライブインシアターで上映されていた映画にヌードで出て来たのがモンタナで、ビリーは笑顔で画面いっぱいのモンタナを見ていた。

また戦時中に戻ったビリーは倒れてしまう。

ラザーロが叫び声をあげて「いつ殺してやるか?今がいいか?」と喚いているのをダービーが止めに来てくれた。

病室で寝ているとダービーが気を利かせ温かいスープと、拾った暖かい毛がついたシルバーの派手なブーツを「寒いだろう、これなら暖が取れるぞ、奇抜だが…」とプレゼントしてくれた。

それがきっかけで2人は互いの家族の写真を見せたり家族の話をして仲良くなった。

ビリーは、結婚記念日の祝いの席に飛ばされた。

皆んなの前で愛しい妻に指輪をあげるビリー。

大喜びの妻は、祝いに来た客達に指輪の逸話(戦争中にビリーが寒さを凌ぐ為に支給された女物のコートのポケットに入っていた)を聞かせる間、恥ずかしがってトイレに入るビリー。すると長男がグラビア雑誌を見て良からぬことをしていた。

「まだこういう雑誌は早いな」と取り上げるビリー。

その雑誌のセンターにはポルノスターのモンタナ・ワイルドハックが写っていた。

その雑誌を見て笑顔になるビリー。

このモンタナが冒頭からちょくちょく出て来ている未来のドーム型にビリーと一緒に住んでいるシャギーヘア女だった。

自室の寝室のドアを開け中に入ると、そこはドイツのあのイギリス兵たちと一緒にいた兵舎の中だった。

 

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彼らがこれから行く戦争中の屠殺場は、英語だと『スローター5』というところであった。(ドイツ語は感想に書いてます)

だが、イギリス兵たちは、これから行くドレスデンは美しい芸術の街で軍需工場もないから、きつい仕事なしで良い所だと言う。

移動する時に、ドイツ兵とアメリカ兵の連絡係になるリーダーが必要だと言う話し合いで、ラザーロが自ら立候補するが、野蛮な彼がリーダーになるととんでもないことになるのが目に見えているためビリーは、ダービーを推薦し、ダービーがリーダーになった。

その時の「出来るかぎりのことをする。全員が無事に皆で力を合わせて諦めずに自由のために頑張ろう。ともに祈りたい。」と言う素晴らしいダービーの台詞。

それに感銘を受けたビリー。彼はまた未来に飛ばされ、自分の結婚後の仕事の昇進した時にいた。

皆の前で話すスピーチで、ダービーの素晴らしいスピーチを丸々一語一句漏らさず真似て演説するビリー。皆から拍手を貰う。

すると。ドライブインシアターに家族でいるビリー。妻と妹は裸のモンタナ・ワイルドハックがスクリーン一杯に映るたびに汚い!とわめき散らし、「長男に見るな!」と叩いたりしていた。運転席のビリーだけ、モンタナを見ながら嬉しそうに笑っていた。

「ビリー!」とダービーの呼ぶ声で戦争中に又戻ったビリーは、仲間たちダービーやラザーロと一緒に、スローター5に付く。

皆の為に、ダービーが率先してドイツ兵の長官の所に話に行くと、目さえ合わせず無視をするドイツ兵。

後でわかったが、アメリカ兵がドイツ人に話しかけてはいけないのだ。ドイツ兵から話しかけられるまで黙って居なければならない、、、言うことを聞かないと銃殺だ。

戦争中のドレスデンは美しい街ではなかった。

この街には大きな施設や工場がないから、スローター5では、汚い仕事や工場の仕事はないと聞いていたのに、実際は、あらゆる汚い仕事をさせられる場所だった。

戦後、仕事の功績を認められ優秀な者しか参加出来ないツアーのメンバーに招待されるビリー。

専用ジェット機に乗り込む時に、長女と妻のバレンシアが見送りに来てくれた。2人は「行ってらっしゃい!」と仲良く手をいつまでも振ってくれた。

窓からその姿を確認したビリーは、娘達の背後にプロレスラーの黒マスクをした男たちを見つける。

ビリーは、席に着きVIP待遇を受ける。が、プロレスラーマスク男たちを思い出し、何かに気づいたかのように我に返ると「25分後に飛行機が爆破されるから飛行機を止めてくれ!」とパイロットに言いに行く。

が、酔っ払いの戯言と相手にされず、訴えも虚しく飛行機は空中で爆破。墜落し全員死亡、、、ビリーを除いて。

墜落した現場は、雪が降り積もる場所だった。ビリーが「私の所在地はシュラハフトフ・フィンです(スローターハウス5です)、、、」うわ言のように、戦時中ドイツ兵に覚えさせられた地名をドイツ語で繰り返しながは、ジェット機の瓦礫に下敷きになっているビリー。

すると先程、飛行場にいた黒い毛糸のプロレスラーマスクを被った集団がスキーで滑って現れた。

そして瓦礫と雪の下敷きの血だらけのビリーを引っ張り出して助けた。

「ビリー墜落事故に遭う」の知らせを聞いた妻は半狂乱になって白いキャデラックに乗り「ビリー、待っていてね、私が迎えに行くから」と呪文のように唱えながら、交通違反や他の車に激突しながら手術中のビリーが待つ病院へと向かう。

が、暴走し過ぎて車が殆ど大破していた為に、一酸化炭素中毒で病院に着いた時には死亡していた。

ビリーの、無理だと言われていた脳の大手術は奇跡的に成功。ビリーは助かった。

ビリーは眠ったまま、少し前の過去にもどる。愛妻のバースデー当日の朝だ。

目隠させた寝起きの妻を、長いリボンを伝って玄関の外に導くというイベントを計画して、喜ばせるビリー。

妻も長女も、このイベントにキャーキャー大はしゃぎで喜んでいる。が、長男だけは冷めてふてくされている。

玄関外に妻を連れて行き見せたのは、前々から妻が欲しがっていた、白いキャデラックだった。

素晴らしいバースデイプレゼントに妻はビリーにキスの嵐を、、、そして「なんて素敵な車なの!大切に乗るわ!この車に合うようにダイエットするからね!」といつもの台詞を言うとビリーに繰り返しキスをした。

 

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又、戦時中のドレスデンに飛ばされたビリーは、多くの人が処刑される街を歩き、寒さの中で重労働させられた。

スローターハウス5で午後9:55、いきなりやってきた新人のアメリカ軍服にナチス鉤十字を施した、頭がおかしいアメリカ兵の自己紹介を皆で聞かされていた時に、爆弾が投下されてしまう。ドイツ将校は、「チャーチルの甥がいるから大丈夫だ」と言っていたのに。

ドレスデンには主要な施設はないから安全な場所と認知されていただけに、鳴り響く空襲警報に誰もが信じらないと固まってしまう。

突然過ぎて抵抗も出来ない為、ドイツ兵もビリー達、捕虜のアメリカ兵達も、地下の防空壕に降りていくしかななった。

ものすごい空爆の爆音が鳴り響いて行く。

爆弾投下後、しばらくすると無音状態になったのを確認し、皆、ソロソロと外界へ出て行くとドレスデンの街は、跡形もなく消え去っていた。

瓦礫と火災があるのみ。

誰もが無気力になって行く。

また、戦後のアメリカに飛ばされたビリーは、妻が事故で死んだ事を娘夫婦に告げられ、娘は「お父さんが心配だから一緒に私達と暮らしましょう」と何度も説得される。

だが、ビリーは、愛犬と2人で仲良く暮らす事を決め、娘の頼みは断る。

階段を登って行くビリーは、一瞬、ドレスデンの空爆にあった時の防空壕の階段を上がって行くのとシンクロした。

部屋で休んでいると、話を聞いて心配した長男が軍隊で昇進して尋ねて来た。(グリーンベレー入隊していた)

年老いて脳の大手術をし、おまけに妻を亡くした父親に向かい、今までの放蕩息子だったことや自分の愚かさを詫びる長男。「これからは自慢の息子になりたい」と言う。

これからの父の心配をする息子に「私は一度もお前を恥じたこともないし、怒ったこともない。いつもお前は私の自慢の息子だよ」と偉くなった息子に笑顔で話すビリー。

息子は安心したように軍服を着たままビリーに敬礼し、ベトナムへ旅立った。

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その夜、ビリーと愛犬の寄り添うベッドの前に光る物体が現れた。

光は前に見た時より近づいてきて、、、ビリーと愛犬は光に包まれ、あっという間に連れ去らてしまった。

トラルファマドールという星に来たビリーと愛犬。

そこはドーム型の大きな建物で、星空や星に広がる世界が見渡せた。

部屋の中には豪華な装飾品や家具が設えてあるが、ビリー以外の他の人間も異星人もいない。

( *映画には異星人は声しか出てこない)

ビリーが驚いているとドームの上の方から、トラルファマドール星人達の声が聞こえてきて、ビリーの「ここはどこか?」とかの色んな質問に答えてくれた。

次元が違う4次元に住むトラルファマドール星人達だから、3次元に住むビリーには見えないのだそう。

トラルファマドール星人達はビリーがきたことを歓迎していると言う。

色んな質問をしていたら、突然、裸のモンタナ・ワイルドハックが現れた。

映画関係者のハウスパーティーに呼ばれてプールサイドで日光浴していたら、いきなり光に包まれあっという間にここに連れ去らたという。

2人が話をしていると「いつ君たちは結合するのか?」と即してくるトラルファマドール星人達。

急にそんなこと言われても人間には無理だ、と話すビリー。

しばらくするとモンタナが満更でもない雰囲気に、、、その気になったビリーは、「部屋を暗くして」と上の方に顔を向けて、トラルファマドール星人に頼む。

2人で世間話をするビリーとモンタナ。キスをしてると、

「地球人は、暗くしないと契れないのか?」と言い、暗くすると直ぐに「もう結合したか?」と一々聞いて来てビリー達を呆れさせるトラルファマドール星人達。

ドレスデンの無差別爆撃投下の翌日、ドイツ兵からビリー達、捕虜に命令が下る。

瓦礫と死体処理をしメモを取ること、そして貴重品や物が見つかったら、どんな物でも回収して札をつけてドイツ兵に渡す事。どんなくだらないものでも無断で取ってはならない、、、万が一、くすねたのを発見したら銃殺、という命令だった。

来る日も来る日もドイツ兵の下で、死体処理をして行くビリーやアメリカ兵達。

その時のことをトラルファマドール星人に話すビリー。

「世界の終わりだった。」と言うビリーに、世界の終わりと地球は関係ないと言うトラルファマドール星人。

世界の終わりは分かっていて、これからずっと先に新しいエネルギーが開発されたのをトラルファマドール星人の検査士がボタンを間違えて押してしまったせいで、宇宙全体が消えてしまったと言う。

「分かっているなら止めればいいのに。」と言うビリーに、

「決まっていることは変えられない、何度も試したが押されるボタンは押される。そう言うものだ」と言う。

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ある日、ダービーが妻が大好きなドイツ名産の陶器製人形を見つける。瓦礫の中に投げ捨てられていたのだ。

ビリーもダービーから話を聞かされていたので、ダービーの妻が無くしてしまったお気に入りの品だと気がつき、自分の事のように喜ぶビリー。

ダービーは、嬉しそうに笑い、「奇跡だ。妻に見せよう」とポケットに入れる。

楽しそうにする2人の様子を見つけたドイツ兵達は、何を話しているか尋ねた。

ダービーが「妻がなくしたお気に入りの陶器の人形に瓜二つなんですよ!いやそのものです。」と人形を嬉しそうに見せた。

すると、ドイツ兵達は、彼を近くの塀に連れて行き、いきなり銃殺してしまった。

ビリーは止めに入ろうとして殴られ気を失ってしまい、ビリーも撃たれてしまった。

半分意識があるのか、ビリーはドイツ兵達に手を振り、死亡した。

また他の時代に飛ばされたビリー。

ビリーにモンタナが新しいドレスを見せていた。

スポットを、可愛がるモンタナに妻には唸っていたと話すビリー。パンケーキがうまかったと話すと、モンタナは「私達の子供が欲しいわ」と言うのでビリーはトラルファマドール星人に部屋を暗くするように頼んだ。

妻の死後、娘夫婦は心配してよく訪ねてきた。

ビリーは、ついにトラルファマドール星人の話をし、ポルノ女優のモンタナ・ワイルドハックと一緒に暮らしていて子供も生まれるんだと話すと、娘婿は「行方不明になっている有名女優と義理の父が同棲中だなんて!」と驚く。

医者を紹介すると言う娘夫婦に、「私はあの星のおかげで正気だ。世界は瞬間の集合体だから死は怖くない。生きるのには楽しいことだけ考えて悪いことは無視だ」と話す。

未来にもいった事があるならどれくらい先に行ったのか?と聞く娘婿に「自分が死ぬ時までだよ。フィラデルフィアであの星についての公演中だ」と話すビリー。

自分の殺人の時までには、ビリーはトラルファマドール流の運命論を受け入れていて、トラルファマドール流のすばらしい個人的な平和を手に入れていた。

世の人々にもこの幸せな人生論と真実を、生きる哲学として広めようと動いて行くビリー。

多くの人々に広めていくに連れて自然と地球上で有名な人物になってしまう。

ビリーの運命論は現実(少なくともビリーが知覚した現実)に基づくもの。

「ビリー・ピルグリムが変えることのできないもののなかには、過去と、現在と、そして未来がある。」

トラルファマドール星人の誘拐者の中の人間に同情的に見えたひとりは、彼が訪れたことがある31の生命が住む惑星のうち、「自由意志といったものが語られる世界は地球だけだった」と言う。

ビリーの死は、奇妙な一連の出来事の結果である。

彼はアメリカ合衆国が多くの小国に分裂した未来に、公衆の前で演説中に、ラザーロに撃たれて死ぬ。

ビリーはその演説中、「演説が終わるとわたしは殺されるだろう。死は怖くない。そして生きる、トラルファマドール星人のあいさつをしましょう。永遠につながり、抱きしめている。こんにちは。さようなら。」と宣言し、多くの観衆がざわめく中、動かしようのない事実を彼のメッセージを伝えるために使う。

時間は、3次元の切片に加わるもうひとつの次元であり、我々はその切片が同時に存在することを知っているのだから、誰もが常に生きており、死は悲しいものではないと、メッセージを残し死んでいく。

気がつくと空爆直後のドレスデンにいた。イタリア兵たちがドレスデンの廃墟から高価な物を盗んでいた。流れ弾に当たるビリー。

遠くでモンタナの声がした。

トラルファマドール星に又飛ばされたビリー。

モンタナが出産し、可愛い男の子が生まれる。

喜ぶビリーはモンタナに「名前は何する?」と尋ねると即答で「ビリー」と答えるモンタナ。

ビリーは2人と幸せを分かち合い、それを見ているトラルファマドール星人達は、3人に拍手喝采を送る。

大聖堂のパイプオルガンが壮大に鳴り響く。宇宙で花火があちこちに上がる。

ビリーとモンタナと生まれてきた息子ビリーは、満面の笑みで手を振りトラルファマドール星人達の大喝采に答えるのだった。

= Lyraの感想 =

「ドイツ兵と日本が世界を壊してるから正義感から志願兵になった」というダービーの台詞が引っかかる。アメリカだって空爆をこのドレスデンに誤爆して味方を大勢殺し、日本にも広島・長崎に落とし大量虐殺してるじゃないのか?と頭にきたが、、、。

Slaughter5とは、日本語で屠殺場5番の意味。舞台のドレスデンでは、「シュラハトホーフ=フュンフ」(ドイツ語: Schlachthof Fünf)。これが、実際のビリー達が収容されたドイツ語の屠殺場の発音だ。

繰り返し直立不動で発音練習させられるビリー達が、何故か心に残る。

無表情で当たり前に繰り返すアメリカ兵たち。

この「やらされたまま」と言うのがこの映画の全体のトーンなのだ。

ビリーは、トラルファマドール星で時を過ごし、ドレスデンで過ごし、捕虜になる前の第二次世界大戦中のドイツで深い雪の中をぼんやりと歩き、戦後のアメリカで結婚生活を送り、何年も後の地球上での彼の殺人の瞬間に向かう。

タイムトラベル、タイムリープ。

言葉は変われど、どの映画も小説も時間旅行出来る主人公たちは、皆、良き世界にすべく事件や歴史を命がけで変えようとする。奮闘するものだ。

しかし、この主人公ビリー・ピリグリムは違う。

ただ、「そういうものだ。」と達観しているだけ。

時間の流れを変えようともしない。ただ、その波に身を任せ時間の流れに乗るだけなのである。(映画内では唯一、飛行機事故に遭うのを阻止しようと試みたが無駄に終わる)。

小説の中でしつこいくらいに繰り返される台詞”So it goes”「そういうものだ」は、この映画の中ではトラルファマドール星人が一回言うだけ。

だがLyraには感じる、、、ロイヒル監督は熱狂的なヴォネガットフリークなのだろう。

ヴォネガットの言わんとしていることをかなり理解している彼は、ロイヒル調のカメラワークだけで「そういうものだ So it goes」を語っている。

小説の「スローターハウス」はいつかまた別の機会にお話しようと思うが、この決まり文句の使われ方のニュアンスをわかって頂くために1つ例を挙げると、ビリーの父は友人と狩に出かけ友人に鹿と間違われて打たれて死んでしまう。そういうものだ。

と言う感じに使われる。

まるで繰り返しの歌のよう。

ヴォネガットの小説内のビリーは作品内で語るときに、死に触れる時(人でも動物でもシャンパンの泡でも)は、必ず「そういうものだ」(”So it goes.”)という語で締めくくる。

それは、まるで悲惨な死や辛い運命を軽く見せ、死がありふれた事でユーモラスでさえあると、クールにおどけてるようだ。

カート・ヴォネガットの筆調は、ユーモアに満ちており、運命に翻弄される人間というものをうまく表している。

それはどこか客観的ですらある。戦争を自己体験しているのに、、、

その客観的な引きの目線が、この映画にも現れていて、まるで1人の人間の喜劇ショーを舞台の最前列で見ている気分になった。

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この映画を見た人の多くは、悲惨な映画とか、人生を諦めている映画のように言う。

果たしてそうだろうか?

ビリーは宇宙人にさらわれている。1967年に空飛ぶ円盤によって地球から誘拐され、トラルファマドール星の動物園に収監される。

トラルファマドール星人は四次元的知覚を有しており、生命の一生を同時に見ることができるためにこう話す、、、

「人が死ぬとき、その人は死んだように見えるにすぎない。過去では、その人はまだ生きているのだから、葬儀の場で泣くのは愚かしいことだ。あらゆる瞬間は、過去、現在、未来を問わず常に存在してきたのだし、常に存在し続けるのである。」と。

この言葉はある意味、生命の永遠性を唱えているのではないだろうか?時の流れの中で人はちっぽけな存在だが、全ての流れは繋がっている。

自分の生きてきた過去は、嘘でも幻でもなく確かに在り続けるし、いま現在は未来に繋がり、未来は自分を待っていて、未来は自らの分身であり自分を記憶してくれる子たちに受け継がれ、また先へと繋がって行くだろう。

ならば死は怖くないし、生きていくことも辛くない、だから、良い事だけ覚えて生きろ、と言っているのだ。

どこにでも自分=私は生きて存在しているのだから。

この映画は、人生に翻弄されながらも明るくいきていく1人の男の話なのである。

それ以上でもそれ以下でもない。

ビリーは、電気ショックをかけられ、味方のはずのラザーロに殴られ恨まれ殺され、妻は死に、友人はドイツ兵に殺され、自分も1度ドイツ兵にやられる。

だが、全てを受け入れる。

仲間と笑い語らい、妻にはプレゼント攻めしたり笑わせようとイベントを仕掛け、放蕩息子の悪事を上手く片付け、愛し続け、娘を愛し、母を愛し、愛犬と戯れ、仕事を真面目にこなして財をなし、全てを受け入れ哲学を表明し人々に伝道して大成功する。

ビリーは前向きだ。

どんな悲惨な目に会おうが受け入れて、必ず前を向いて生き、歩き続ける。

人生とはそういうものだ。

ラストに向かう時ビリーは、「全てはひとつの次元であり、我々はその切片が同時に存在することを知っているのだから、誰もが永遠に生きており、死は特別悲しいものではない」と、ステージ上で演説している時、殺されるのを知っているのに逃げずに、むしろをそれを利用して人々にメッセージを伝えようとする。

明るい人生を人々に送ってもらうために、自らを投げ出したのだ。

人とは死を恐れるもの、、、

その死は怖くない、と言う実体験を表されたら人は受け入れたくなるもの。

そういうものだ。

ただ、それが嘘っぱちならば誰も受け入れない。

が、ビリーの実体験に裏付けられた言葉は嘘偽りがない為に人々の心に響いていく。

決定論的宇宙の前に人々はひれ伏すしかないだろうか?

いや、それは自分次第だ。

あなたが変えたいと思うならば宇宙に対抗しても良いのだ。

あなたが変えずに流れにただ身を任せるだけでも良いし、

あなたがその流れを利用して上手く人生を楽しく生きていくのも良いのだ。

このストーリーの大きな時の流れは、戦争のような個人では変えられるないものや、国家などの大きな集合体を意味しているとも言えよう。

確かに悪い事を良い方向には、なかなか変えられないかもしれない。

だが、流れは繋がっている。

ならば楽しい未来の為に、恐れずに生きて行っても良いのではないか?

この映画では小説と少しだけ違うところがある。(変態の話はないし、トラルファマドール星人達が宇宙に何をしたかは詳しく描いてないし、ラストの場所が違う)長さの制約があるからだろう。

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映画のラストでは、ビリーは、トラルファマドール星に飛ばされて女優のモンタナと生まれたばかりの2人の間の息子と3人で笑顔でトラルファマドール星人たちに手を振る。

3人は満面の笑みで宇宙に存在し続け幸せなのだ。

トラルファマドール星人達は、動物園の中の彼らに拍手喝采を送る。

奇妙な終わり方。

だが、映画より人生は奇なり。

人生とは喜劇なのかもしれない。

ならば笑って生きて行っても良いのでは?

だって「そういうものだ」から。

= The Tralfamadorians =

気になってる方の為に少しだけ説明しますね。

トラルファマドール星人は「タイタンの妖女」や「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」にも登場する宇宙人。

トラルファマドール星人は、物理的にはトイレのプランジャー(吸引具、つまりスッポン)と似ていて、四次元(4つめの次元は時間である)を見ることができる。

その人生のすべての瞬間を既に見ており、その運命を変えるような選択をすることはできないが、自分が集中したいと思う人生の瞬間を選んで焦点を合わせることはできる。

ビリーは時間を選べないけれど存在出来るが、トラルファマドール星人は、好きな時間に飛べるが存在できない、、、というのが違い。

どちらが便利なんでしょうね。

いつかまた、小説のお話をするかも。

その時は、またお付き合いしてくださいねっ。*\(^o^)/*

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『スローターハウス5』
” Slaughterhouse-Five, or The Children’s Crusade: A Duty-Dance With Death”

作者 カート・ヴォネガット
国 アメリカ合衆国
言語 英語
ジャンル SF小説
刊行 1969年
訳者 伊藤典夫(1973年)

= スローターハウス5 Slaughterhouse-Five =

監督 ジョージ・ロイ・ヒル
脚本 スティーブン・ゲラー
原作 カート・ヴォネガット
製作 ポール・モナシュ
出演者 マイケル・サックス
ロン・リーブマン
ユージン・ロッシェ
音楽 グレン・グールド
撮影 ミロスラフ・オンドリチェク
編集 デデ・アレン
配給 日本 ユニヴァーサル映画=CIC

公開 アメリカ合衆国1972年3月15日
フランス1972年5月24日(CIFF)
日本 1975年4月12日

上映時間 104分

製作国  アメリカ合衆国
言語 英語

『スローターハウス5』は、ジョージ・ロイ・ヒル監督、マイケル・サックス主演で、1972年に映画化され、カンヌ国際映画祭審査員賞(1972年)とサターンSF映画賞(1972年)ヒューゴー賞映像部門(1973年)を受賞した。ヴォネガットはこの映画を「小説よりよくできている」と評している。[要出典]グレン・グールドのゴールドベルク変奏曲などが劇中音楽として使用されている。

日本語版では、森本レオがビリーを吹き替えした。

キャスト

ビリー・ビルグリム:マイケル・サックス
ラザロ:ロン・リーブマン
ダービー:ユージン・ロッシェ
バレンシア:シャロン・ガンズ
モンタナ:ヴァレリー・ペリン
ワイルド:ロバーツ・ブロッサム
マーブル:ソーレル・ブーケ
ビリーの息子:ペリー・キング
ジョン・デナー
フレデリック・レデブール

スタッフ
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
脚本:スティーブン・ゲラー
製作:ポール・モナシュ
音楽:グレン・グールド
撮影:ミロスラフ・オンドリチェク
編集:デデ・アレン

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